氷と風
「君はいつも、俺に風をくれる」
「風、ですか」
ああまたわけがわからないことを言っている。
それでもその目が自分だけに向けられていることが嬉しいだなんて、思ってはいけないだろうか。
「見たこともない異国の、風だ」
「しかも異国…」
嬉しそうに話す彼を見ていたら、私までおかしくなってしまいそうだ。
しかしその直後の彼の言葉で、私は我に返った。
「織田信長の気持ちが少し分かった気がする」
「…なっ」
何故それを!と言わんばかりに真っ赤になった私は、彼にどう映ったのだろう。
何を隠そう、私は織田信長が大好きなのだ。
彼に関わる伝記や小説を手当たり次第読んでいる私だったが、まさか彼に知られているとは…。
鯉のように口をパクパクさせている私をさも珍しそうに見ていた彼だったが、ふと元の真面目な表情になった。
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