氷と風
この間は相手のテレビ局が一歩も引かない状況で焦った。出演料がどんどん高くなっていって、最後はサラリーマンの給料数か月分くらいにはなっていて。さすがにここまで高いのは初めてだったため、会議中である先生に緊急で電話をかけた。
『どうした?』
『あの、テレビの出演依頼のことなんですけど…』
『断っておけと言ったはずだ』
『はい、でも出演料が尋常じゃなく高くって、』
『断れ』
プツッという機械音が耳の奥で響いた。
もし私だったらなら、そんな大金積まれたら首を縦に振るしかないと思うのだが。
この人はやはり変わっている。
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