キライだから傍にいて
 次の日。

 仕事から帰ってきた兄貴は、見知らぬ1人の女性と一緒だった。

 色々と完璧な兄貴とは釣り合わなさそうな女性。

 こうして女性を連れて帰ってくるのは、今までで初めてだ。

 今まで色んな彼女がいたのにも関わらず、どうして今回に限って女性を連れて帰ってきたのか……。

 それは、次の瞬間に発した兄貴の言葉で判明した。


「こちら、俺の彼女」

「はじめまして……!郷田 裕美(ごうだ ゆみ)といいます!」


 どうしてだろう。

 兄貴の口から“彼女”という単語を聴いた瞬間、心が打ち砕かれたような気がした。

 気が遠くなるような気がした。

 周りの音が聴こえなくなって、自分の心臓の音がすぐ側で聴こえるような気がした。
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