キライだから傍にいて
 私はこんなにも兄貴のことがダイッキライで、たくさんたくさん、こき使ってあげているのに、……どうして?

 ずっとこき使ってきてあげて、いまさらになって私の傍から離れていかないでよ。

 ずっとずっと、私の奴隷として生きていってよ。

 お願いだから、私のもとから離れていかないで……!


「ふぇ……」

「! あ……わりぃ、つい、怒鳴っちまって……」


 申し訳なさそうに眉を八の字にしながら、兄貴は私に近付いてきた。

 そして、そのまま抱きしめてくれて、頭を優しく撫でてくれた。

 裕美さんは私の言動に怯えているのか、瞳をうるうると潤ませては自らの手で口を覆っていた。

 私の言動に驚いているようだけれど、これが私、深奈なんだからね?

 驚かれることに驚くんだけど?
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