腹黒王子に囚われて
「へ……?」
予想外のことを言われたせいか、目を丸くさせてあたしを見つめる。
力の抜けたその腕を振り払い、今度こそ足を踏み出した。
「あ、おいっ……」
後ろから、さらに呼び止める声が聞こえたけど
その声に立ち止まる気なんかさらさらなくて、
あー、めんどくさ。
なんて思いながらため息をついて
あたしはさっさと裏口を出た。
正直、新條瑛太のあの姿を見たって
何も驚きやしなかった。
むしろそれは納得のほうが強くて…
カッコよくて優しい人間なんていない。
そんなの最初から分かり切ってた。