腹黒王子に囚われて
「ったく……
何勝手に逃げてんだよっ……」
上履きから靴に履き替えながら、つい愚痴を吐いてしまう。
いつも待っているはずの
あの無表情の顔が頭の中に思い浮かび、ちょっとだけ腹が立った。
気にしてない、とか言いながら
本当はすげぇ気にしてんじゃねぇの?
そんなことを思いながら、
近道をしようと裏口まで駆け足で行くと、
そこにどこかで見たことのあるような男が立っていた。
そしてその前には……
「……あおい…?」
葵が彼の顔を真っ直ぐと見つめながら、何かを話している。
そして次の瞬間……
「…っ!!」
その男は、葵を抱きしめた。