腹黒王子に囚われて
 
「やっぱなー。
 俺が思った通り、イイ女になったじゃん」

「……」


ツカツカと歩み寄り、あたしとの距離を縮める。

逃げ出したいはずの足は、まるで凍り付いてしまったかのように一歩も動かない。


拓先輩は、すぐ目の前まで来ると
その綺麗な顔を必要以上に近づけていた。


「その瞳、すげぇぞくぞくする」

「…っ」


瑛太と同じように、整った顔をしているのに
瑛太とは正反対の、冷たい微笑み。


恐怖で汗がにじみ出て、
カタカタと肩が震えた。



「……あ、たし……帰ります…」



やっと絞り出された、蚊が鳴いたような声。

必死に足を一歩動かしたのに、その腕をとられそのまま拓先輩の胸へと抱きしめられた。
 
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