腹黒王子に囚われて
「いてぇな……」
「や、めてください……」
腕から逃れ、一歩下がった。
拓先輩の唇からは、赤い血がにじみ出ていて
自分がしてしまった行動に一瞬後悔して、緊張がはしった。
「相変わらず、気の強ぇ顔」
「……」
「だからもっといじめたくなる」
「…っ」
背筋が凍った。
決して触れてはいないのに
まるでナイフで射抜かれたように息苦しくなった。
にやりと笑うその微笑みは、間違いなく悪魔だ。
「ま。今日はとりあえず解放してやるわ。
近いうちに会いに行くから待ってろよ」
そして構えていた体は無意味に、
拓先輩はあたしのもとから去って行った。