腹黒王子に囚われて
「ここまで来れば大丈夫だろ」
駅を通り越して、結構歩いたところで手は離され、ようやく自由になった身。
ま、ある意味家に近いからいいけど。
「で?今度は何?
アンタのことなら、誰にも言ってないけど」
「うん。だと思った。
けど」
ちらりと目線を上げ、じっと見つめる。
少しだけ茶色がかった瞳が、綺麗だな、なんて思った。
「俺……
お前のこと、好きになったっぽいんだ」
ふいをつかれた言葉。
一瞬、何を言われたのか分からなくてぽかんとする。
だけどすぐに理解出来て、眉をしかめた。
「嘘でしょ。
いいよ、あたしには仮面かぶらなくて」