腹黒王子に囚われて
だけど意外なことに、上沢先輩とあたしの最寄駅は一緒で、
「どうすっかなー。
ビニ傘とか家にいっぱいあるし、
濡れるけど走って帰るか」
なんてことを言いだすから、
「それなら、家まで送っていきましょうか?」
「え、マジ?」
「はい。べつにこの後予定もないですし」
「……じゃあ、お願いすっかな」
と、結局家まで一緒に帰ることになった。
相合傘で。
とくに、深い意味なんてなかった。
良心が働いた行動で
たかだかコンビニで買う300円の傘でも、たった一回のために買うのは確かにバカらしいと思ったから
あたしの10分を犠牲にして、家まで送ってあげる。
それだけの気持ちだったのに……
「せっかくだし、寄ってかねぇ?」
「あ、いえ……」
「なんか雨、ひどくなってるし。
お前もだいぶ濡れただろ。少しあったまってけよ」
「……じゃあ…」
少し強引に誘われたその言葉に、
相手が上沢先輩ということもあって断れなくて
あたしはお言葉に甘えて、家に上がらせてもらうことにした。