腹黒王子に囚われて
 
「葵……」


瑛太は優しく微笑むと
あふれ出るあたしの涙を指で拭う。

そんな仕草を愛おしいと思いながら、そっと瑛太を見上げた。


「俺も……。
 葵が好き」

「でもあたしはっ……」

「もういいから黙って」

「んっ……」


あたしの言葉をさえぎるように、瑛太が甘い口づけを落とす。

甘い口づけは、次第に激しさを増していき
何度もあたしの反応を確かめながら、瑛太の舌があたしの中へ入ってきた。


自分の中に入ってきた瑛太の舌が
どうしようもないほど愛しく感じて
拒もうと思ったのに拒めない。

それどころか、引き寄せられるように自分のを絡めた。


キスがこんなにも気持ちのいいものだとは知らなくて
もっともっととせがむ自分がいる。



これが……

好きな人とのキスなんだ。

 
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