腹黒王子に囚われて
「美咲は……
あたしと瑛太が付き合ったって聞いた時、ショックとか受けなかったの?」
「え?何それ?」
「ほら。だってその前まで、新條くんカッコいい!とか言って、騒いでたじゃん」
「あー……」
あたしと瑛太が付き合う前まで、毎日のように瑛太を見ては騒いでいた美咲。
瑛太の話をする美咲には、いい加減うんざりしていて、ほとんど話を受け流していた自分。
まさかそんな自分が、
本当に瑛太を好きになって、付き合う日が来るなんて思ってなかった。
美咲はほんの少しだけ考えるようにして
またにこっと笑って口を開いた。
「新條くんは、あたしにとってアイドルを見ているのと同じようなもんだから」
「アイドル?」
「そー。
遠目から見て、カッコいい!って騒げればいいの。
だから逆に、自分の友達が付き合うってなったら、その距離が近くなった気がして嬉しかったよ」
「……そういうもん?」
「そういうもん!」
深く頷く美咲を見て、本当に心からそう思っているんだと伺えた。
「それに、葵が相手だったら
絶対に敵わないって分かってるし」
それは、嫌味ったらしさが一つもない口調だった。