腹黒王子に囚われて
遅くなっちゃったな……。
結局、美咲と夕ご飯まで一緒に食べていたので
家に着くころには9時を回ろうとしていた。
瑛太にはすでに連絡済なので、とくに電話が来るようなことはない。
瑛太は瑛太で、まだ友達とワイワイやっているような感じだし。
駅から歩いて、ようやく自分のアパートが見えてきたところだった。
ふと階段の下に、誰かが座り込んでいることに気が付く。
暗がりの中、それがどんな人物なのかは分からなくて
少しだけ警戒しながら近づいていく。
向こうもあたしの存在に気づき、座っていた腰を上げ立ち上がった。
その瞬間……
「…っ」
足が地面にへばりつく。
心臓にナイフが刺さったような衝撃が走る。
「おかえり」
あたしを笑顔で出迎えたのは
拓先輩だった。