腹黒王子に囚われて
「ダメじゃん。こんな遅くまで出歩いちゃ」
「……」
動けなくなったあたしとは裏腹に、拓先輩は一歩ずつ距離をつめ近づいてくる。
カタカタと体が震えていくのが分かった。
ああ…
あたしはやっぱりまだ、拓先輩のことが怖いんだ……。
「葵」
「…っ」
髪をとられ、その妖艶な笑みを向けてくる。
ぞくりと背筋が凍った。
「新條くんは?今日はいないの?」
その瞬間、この前の出来事を思い出す。
拓先輩を殴った瑛太。
よく見ると、拓先輩の口元はまだうっすらと傷が残っていて……。
「なんて、いるわけないよな。
ただの遊びなんだし」
と、腹の立つ言葉を言われた。