腹黒王子に囚われて
頭にカァッと血が上った。
思いきり引っぱたきたいのに、腕を取られているせいでそれも許されなくて、
逆にその体を引き寄せられてしまう。
「…っ」
ちくりと痛む首筋。
気が付いた時には、拓先輩があたしの首元に顔をうずめていて
慌ててその体を引きはがした。
だけど感覚で分かる。
そこにはもうすでに
拓先輩の痕がついてしまっていると……。
その時、急にあたしたちの体が明るく照らされた。
それは一台の車が、あたしたちの前を通った時に照らしたライトで……
一瞬の光だったけど、我に返させるのには十分な光だった。