腹黒王子に囚われて
 
頭にカァッと血が上った。


思いきり引っぱたきたいのに、腕を取られているせいでそれも許されなくて、
逆にその体を引き寄せられてしまう。


「…っ」


ちくりと痛む首筋。

気が付いた時には、拓先輩があたしの首元に顔をうずめていて
慌ててその体を引きはがした。


だけど感覚で分かる。


そこにはもうすでに
拓先輩の痕がついてしまっていると……。




その時、急にあたしたちの体が明るく照らされた。

それは一台の車が、あたしたちの前を通った時に照らしたライトで……
一瞬の光だったけど、我に返させるのには十分な光だった。

 
< 185 / 257 >

この作品をシェア

pagetop