腹黒王子に囚われて
 
すでにほとんど脱げかけている制服の手前、
突然の拒みに瑛太は驚いていて、


「……なんで?
 どうかした?」


と、訝しげな瞳を向けてくる。


その瞳がなんだか怖くて、つい目を逸らしてしまう。



「葵」

「…っ」



そっと触れられた髪にすら、ビクンと反応して目を閉じてしまって
瑛太もその手をひっこめた。


「……なんかごめん」

「ちがっ……」

「今日は帰るわ」


瑛太はあたしの体に毛布をかけると、自分も脱いでいたブレザーを羽織る。


あたしは引き留めることも出来なくて
ただ流れる沈黙に堪えながら、瑛太の背中を見つめていた。
 
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