腹黒王子に囚われて
16章 浸食
「美咲、じゃあね」
「え?あれ、新條くんは?」
帰り、一人で鞄を持って帰ろうとするあたしを、美咲が当然の質問をしてきた。
「先生の頼まれごとをされてるみたいで、しばらく一緒に帰れないんだって」
「そうなんだー。じゃあ、しばらく新條くんとお近づきになれないのかぁ……」
と、人の彼氏に向かって、そんな台詞を吐く。
まあ、本心じゃないと分かってるから、何も思わないけど。
「新條くんも、先生からの用事とか、絶対に断れなそうだよね。
葵なら即断りそうだけど」
「……あのねぇ…」
にたっと笑う美咲に、目を細めて睨む。
確かにそれは当たってる。
みんなの前での瑛太なら、絶対にどんな嫌な用事も引き受けそう。
だけど……
瑛太が今、その用事を引き受けてる理由はそれだけじゃない。
あたしを避けるための口実のようにも見えた……。