腹黒王子に囚われて
 
「上沢先輩、今日も来てるの?」

「うん、いるよ。
 ってか、今、毎週のようにOBが来て練習試合してくれてるみたい」


言葉を詰まらせているあたしの代わりに、美咲が質問をしてくれた。

でも返ってきた言葉に、さらに嫌な汗をかいていく。


まさかそんなに拓先輩が、この学校に出入りしているなんて……。



「それでね。
 拓先輩、今彼女いないって言ってたからずっとアタックかけてたの。

 今日ついに、その気持ちを伝えたんだけど……」


一度あたしをちらっと見るリカ。

じわりと涙を浮かべると、その瞳を伏せた。




「俺には忘れられない子がいるから無理だ、って言われたぁ……」

 

 
その言葉で堰を切ったかのように、リカは再び泣き崩れる。

それを支える美咲。



「忘れられない子って、絶対に葵のことだよ!!

 ……付き合ってたよね。2年前」


「……」



その言葉に、
あたしはただ、悔しくて唇を噛んでいた。

 
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