腹黒王子に囚われて
確かに、周りの目から見たら、あたしと拓先輩は付き合ってた。
優しい拓先輩に愛されたあたし。
誰もが羨み、憧れを抱いていた。
だけど誰も知らない、裏の顔。
そこに愛なんてない。
あるのは欲望のみ。
「でも……
こう言っちゃなんだけど……
葵を振ったのは上沢先輩のほうだよね……?
だからそれはないんじゃない…かな?」
救い船を出すように、美咲がなだめた。
そう。
あたしは拓先輩に振られたのだ。
拓先輩が卒業をして、会う頻度が少なくなった理由から……。
きっと拓先輩に、ほかに気に入った子が出来たんだと思う。
周りはそんなあたしを、哀れな目で見たけど
内心あたしはようやく解放されたという思いしかなかった。
ようやく自由になれたと……。
だけどリカはふるふると首を振ると、
「拓先輩言ってた……。
失ってから気づいた、って……」