腹黒王子に囚われて
「俺がお前に用があるっていったら、一つしかないんじゃない?」
挑発的にも見えるその笑顔は、
周りから見れば、ただの笑顔。
そうだ…
こいつは俺と同じなんだ……。
周りから見ると、完璧な男。
なんとなく思いだしてきた、自分が1年の時だった上沢の印象。
みんなにきゃーきゃー騒がれていて
たいして興味なかったけど、たまに見えたその姿。
完全に自分と同じ匂いがした。
「単刀直入に言うとさ。
葵。
返して」
ストレートすぎる言葉に、周りを囲っていた女子が黄色い声をあげていた。
頬を赤らめる者もいれば
眉間に皺を寄せる者。
俺らが、飯田葵という女を
取り合っているようにしか見えない。