腹黒王子に囚われて
 
イライラする……。

あんな男が、葵の全てを知っていると思うと……
それだけで殺意が芽生えるほど苛立ちを感じる。


後ろからは、心配そうに上沢をなだめる女子生徒の声が聞こえて
それにまた、優しい声で「大丈夫だよ」と返すアイツの声。


ああ……
俺も周りから見たら、こんな男なのか……。


全ての人にいい人に見られようとして……
だけど腹の内ではダークなことばかり考えてる。



あんな男にだけは
なりたくない。





「……瑛太っ…」


「……葵…」



家の前に着くと、そこに予想外の人物。

少しだけ照れくさそうに、一度目を逸らして……



「おかえり」



と、上目遣いを向けて迎え入れてくれる葵がいた。
 
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