腹黒王子に囚われて
 
「……最近、あまり触れてないよね」

「え?……そうか?」

「うん……」


葵がそんなことを言ってきたのが意外だった。

むしろ気づいてないと思ったから……。
俺が葵に触れようとしてないことを。


触れてはいないけど
一緒にいる時間はなるべく減らさないようにしてるし、
会話も笑顔も絶やしてなかった。


けど、


そんな俺の行動は、葵には見破られていた。



こつんと肩に体重がかかって、ふと目をやると葵が俺の肩にもたれかかっていた。

ふんわりと香る、葵の匂い。
シャンプーのいい匂い。

上から覗き込んで微かに見える
第二ボタンまで開けられたワイシャツから見える胸元。
 
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