腹黒王子に囚われて
 
「今日も瑛太くん、一緒に帰れないの?」


鞄に手をかけたところで、美咲に声をかけられた。


瑛太……。
どうだろう。

今日は何も聞いてない。


けど、



「うん」



多分、昨日の今日で、一緒に帰ろうとは思わないだろう。



「じゃあ、また明日ね」
「バイバーイ」


美咲ににこっと微笑みかけ、一人教室を出て行った。


誰も何も言わない。

だからきっとあたしは、いつもと同じ表情を作れてる。


そう。
これでいいんだ。


もし瑛太に声をかけられても
最初の時と同じように、応えればいいだけだから。
 
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