腹黒王子に囚われて
昇降口で靴に履き替える。
ふと顔を上げた先にいたのは……
「お疲れ」
「……」
もう驚くことはしない。
拓先輩だ。
まだ下校開始をし始めたばかりの時間。
たくさんの生徒が昇降口を利用していて
みんな拓先輩に視線を送っている。
中には立ち止まっている生徒もいるし、
誰かが誰かを呼びに行っている様子もある。
だけどなぜか
疎ましくもなんとも思わない自分がいる。
「なんですか」
「昨日の結果を聞きたくて」
「……どうでもいいじゃないですか」
そんなこと、拓先輩に話したくもない。
というか、自分ですら思い出したくもないんだから。