腹黒王子に囚われて
「今、隣にいないってことは、俺の予想が当たったってとこかな」
拓先輩は最初から分かっていたように、不敵な笑みを浮かべている。
その余裕な笑みに腹が立って
答えることもせずに横切ろうとした。
だけどその腕を掴まれ、
「葵。
俺のとこに戻ってこい」
堂々と、その台詞を言った。
周りの女子たちが、一斉に騒いでいる。
中には「ついに本人に言ったよ!」なんて声も聞こえて、
すでに周りには知れ渡っていたのかと、冷静に頭が働いていた。
「……嫌、です」
「じゃあ、新條でいいの?」
「……」
その言葉に、「はい」とすぐに頷けない自分がいる。
頷きたくても
怖くて頷けないんだと思う。