腹黒王子に囚われて
「デート、いっぱいしよっか」
「……え?」
突然の振り。
眉間に皺を寄せて、拓先輩を見上げた。
「これからは葵の行きたいとこも全部連れてってやる。
愛の言葉もいっぱい囁く。
これ以上ないってくらい、お前のこと愛すから」
「……」
騙されちゃダメ。
これはただのあたしを丸め込むための嘘。
たとえその言葉を吐く、拓先輩の瞳が
泣きそうなほど真剣だとしても……。
「俺とやり直そう。
葵」
手を差し出してくる拓先輩に、わずかな動揺が走った。