腹黒王子に囚われて
 
それと同時に、
拓先輩の向こうに、一つの影が目に飛び込んだ。



瑛太……。



遠く向こうに、瑛太の姿。

あたしと拓先輩を見つめ、
ただ虚ろな瞳でたたずんでいる。



ねえ……
何か言ってよ。


拓先輩から、あたしを守ってくれるんじゃないの……?



心の中で訴えかけているのに
瑛太があたしたちのもとへ近づいてくる気配はない。


それどころか……



「…っ」



瑛太はふいと目を逸らし、
あたしたちに背を向け歩き出してしまった。
 
< 226 / 257 >

この作品をシェア

pagetop