腹黒王子に囚われて
それと同時に、
拓先輩の向こうに、一つの影が目に飛び込んだ。
瑛太……。
遠く向こうに、瑛太の姿。
あたしと拓先輩を見つめ、
ただ虚ろな瞳でたたずんでいる。
ねえ……
何か言ってよ。
拓先輩から、あたしを守ってくれるんじゃないの……?
心の中で訴えかけているのに
瑛太があたしたちのもとへ近づいてくる気配はない。
それどころか……
「…っ」
瑛太はふいと目を逸らし、
あたしたちに背を向け歩き出してしまった。