腹黒王子に囚われて
 
「目、開けて……。

 体震えてる」


「え……?」



言われて気が付いた。

微かに震えるあたしの肩。

瑛太はそれに気づき、そっとその肩に触れた。



「目を閉じないで。
 俺のこと、ちゃんと見て。


 葵を抱いているのは、俺だから」


「……」



そんなこと、分かってる。


けど、目を閉じていると
確かに思い出したくもないことが、勝手に頭の中に流れ込んできていて……


しっかりと目を開けた先に
優しく微笑む瑛太。



ああ……

なんだか安心する。
 
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