腹黒王子に囚われて
新條のスマイルに騙されて、美咲は一人先に校舎へ行ってしまう。
あたしはあからさまにため息を吐くと、
「手、痛いんだけど」
「はいはい」
つぶやくあたしに、新條も適当にあしらった。
「どういうことか、説明してもらいたいんだけど」
「何が?」
「なんでアンタの好きな人が、あたしになってるわけ?」
「信じてねぇの?」
「だって嘘じゃん」
真っ直ぐと見つめたって、そう簡単には騙されない。
こんな手口、
たとえドキッとしたって信じる信じないは別の話だ。
「俺は本気で葵のこと、好きなんだけどな」
「……」
だから騙されない、って。