腹黒王子に囚われて
 
別に、瑛太に守ってもらおうとか
かばってもらおうとか、そんなことを思って言ったんじゃない。


ただたんに、あたしを怒らせた罰。



瑛太はまた困ったような顔をすると、



「石井さん。
 あまり葵のこと、いじめないでくれる?」

「あ…あたし、そんなつもりは……」



優しくなだめられる言葉に、涙目になりながら彼女は答える。


どいつもこいつも、猫かぶってるなー。

なんてことを、冷静な目で見ていて。


くだらないから、この場から去ろうと思った。


けど、







「ほんとに今度葵に何かしたら、女だからって容赦しねぇから。

 性格ブスなのはアンタのほうだろ」







背を向けた瞬間、聞こえたのは、
いつもの柔らかな物腰とはかけ離れた、ドスの聞いた低い声だった。
 
< 41 / 257 >

この作品をシェア

pagetop