腹黒王子に囚われて
別に、瑛太に守ってもらおうとか
かばってもらおうとか、そんなことを思って言ったんじゃない。
ただたんに、あたしを怒らせた罰。
瑛太はまた困ったような顔をすると、
「石井さん。
あまり葵のこと、いじめないでくれる?」
「あ…あたし、そんなつもりは……」
優しくなだめられる言葉に、涙目になりながら彼女は答える。
どいつもこいつも、猫かぶってるなー。
なんてことを、冷静な目で見ていて。
くだらないから、この場から去ろうと思った。
けど、
「ほんとに今度葵に何かしたら、女だからって容赦しねぇから。
性格ブスなのはアンタのほうだろ」
背を向けた瞬間、聞こえたのは、
いつもの柔らかな物腰とはかけ離れた、ドスの聞いた低い声だった。