腹黒王子に囚われて
驚いて振り返った時には、
体を震わせて座り込む彼女たちと、
「葵、行こう」
と、優しく微笑む瑛太。
一人意味が分からなくて、手を引かれるがままに連れ出される。
「ほら。これで冷やしとけ」
体育館横の外のベンチに座らされると
濡らされたハンカチを手渡された。
「少し腫れてる」
「あ……」
そっか。
あたし、一発叩かれたんだっけ。
左頬に渡されたばかりのハンカチを当てると、ひんやりとして気持ちが良くて、
スーッと今まで感じていた怒りも消えていった。
「……悪かったな」
「え?」
空を見上げていると、少し間を空けて座った瑛太が謝ってきた。