腹黒王子に囚われて
 
「……何?」


ぼーっと見つめるあたしに、すぐにまた真顔になって訪ねてくる瑛太。

あたしもハッとして、すぐにいつもの調子を取り戻した。


「いや、あんたでも素で笑うんだって思って」

「なんだよそれ」

「だっていつも、嘘くさい笑顔じゃん」


あたしが瑛太に感じた第一印象。

それはこんなふうにかかわり合う前のことで……。

窓辺から見えた、女子に囲まれた瑛太は
やわらかい笑みをみんなに向けていたけど

それはどう見たって、心から笑っているような笑顔には見えなかった。



「……お前って、意外と見てるよな」

「フツーでしょ」



瑛太に特別な感情なんか抱いてない。

だからじっと見つめてたわけでもないのに、そう感じた。


普通に見てれば、気づくこと。
 
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