腹黒王子に囚われて
「どうしたの?急に怖い顔しちゃって……」
「べつに。なんでもない」
怖い顔なんかしてない。
ちょっと顔が火照りそうになったのを、抑えようとして顔に力を入れただけだ。
「やっぱ昨日、お見舞いに行ったの?」
「……うん」
「きゃー!それで介抱したんだ!?」
「……って、なんか変なこと想像してない?」
「え?」
お見舞いというワードだけで、勝手にキャーキャー盛り上がっている美咲。
「え?」と言いながら、その顔はニヤニヤと笑っている。
「おかゆ作って、薬飲ませただけ」
「えー、つまんないのー」
「何を期待してるんだか……」
「そりゃーねー」
相変わらず、ニヤニヤと笑っていて、その顔を見ると腹が立つ。
いったい、人の恋路をみて何が楽しいんだか……。
……。
べつに恋路じゃないか。
「でもさー。ちょっと安心してるんだよー?」
「何が?」
「葵、上沢先輩のこと、まだ気にしてるのかなーっていつも思ってたから……」
その瞬間、箸でつまんでいた卵焼きが落ちた。