腹黒王子に囚われて
 
美咲も知らない。
あたしと拓先輩の間にあったことを……。

真実を……。



「ま、上沢先輩のことなんてもう関係ないし、
 葵は葵で、新條くんとの恋を楽しみなよ!」


「……いたい」



バンと背中を叩かれ、漏らした一言。


新條くんとの恋、か……。

また美咲は知らないことになるんだ。
あたしの身に起きている真実を……。


いつも近くにいてくれるのに、ごめんね。



「ん?なぁに?」

「……美咲。大好きだよ」

「え!何、急に!?
 葵からそんな言葉言われたの初めてなんだけど!!

 もう一回言って!!」

「うるさい」


しばらく、赤面しながら騒ぐ美咲を、ただただうっとうしそうに相手をした。
 
< 94 / 257 >

この作品をシェア

pagetop