腹黒王子に囚われて
美咲も知らない。
あたしと拓先輩の間にあったことを……。
真実を……。
「ま、上沢先輩のことなんてもう関係ないし、
葵は葵で、新條くんとの恋を楽しみなよ!」
「……いたい」
バンと背中を叩かれ、漏らした一言。
新條くんとの恋、か……。
また美咲は知らないことになるんだ。
あたしの身に起きている真実を……。
いつも近くにいてくれるのに、ごめんね。
「ん?なぁに?」
「……美咲。大好きだよ」
「え!何、急に!?
葵からそんな言葉言われたの初めてなんだけど!!
もう一回言って!!」
「うるさい」
しばらく、赤面しながら騒ぐ美咲を、ただただうっとうしそうに相手をした。