腹黒王子に囚われて
 
「葵、帰ろう」

「……うん」



放課後になると、いつものように瑛太があたしを迎えに来た。


そんな日常も、ようやくみんなの目から見て慣れてきたこともあり、あまり騒がれることもなくなっていて、
学校からの帰り道も、人の視線を感じることが少なくなった。



「え、何?」


駅まで来て、いつもなら瑛太は電車に乗るから改札の中へ消える。
あたしの家は、駅の向こう側だから、ここで別れるはず。

だけど……


「今日も葵の家に行く」

「え……」


瑛太は、なぜか家に寄ると言い出した。


「意味わかんない」

「分かんなくていい」

「なんで」

「分かると終わっちゃうから」

「何が?」

「さあ」


淡々とした会話を続けたけど、結局答えが分からない。

瑛太は最近、意味深な言葉ばかり言う気がする。
 
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