涙雨[ナミダアメ]
「麗夜くん…」


「ん?」


「………グス…」


「え?泣いてるの!?」



いきなり泣き出した雫ちゃん。



俺は、雫ちゃんをそっと抱き締めた。



「嬉しいんだ…私。」


「うん。」


「またこんな風に、
笑って、楽しいって思えるのが。
泣きたくなったら泣けるのが。
麗夜くんのおかげだね。」


「俺のおかげか。
何か嬉しい。」



「こうやって抱き締めてくれるとね、余計涙出てくる。」



「あ…外雨すごいね。
雫ちゃんが泣いてるからだ。」


「え?」



「涙雨だね。
いつもさ、雫ちゃんと会うとき雨が降ってたよね。
ほら、初めて会った時も。」


ずぶ濡れでお化けみたいだったけど。



「ふふっ…
そうだったね。あの時は
傘なんて頭になかったから。」



悲しそうな瞳で
泣きそうなのに泣かなかったよね。




でも今は、すぐに泣く。


かとおもったら笑う。



コロコロ表情が変わって
いろんな雫ちゃんが見れるんだ。



< 178 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop