涙雨[ナミダアメ]
彼がこうしてプレゼントを渡してくるのは、日常で。

正直困っている。


クローゼットには沢山のかばんや服がある。


どれも高価なもので、
沢山ありすぎて使うのに迷うくらいだ。


「ありがとう。秀。」


「喜んでくれて良かった。雫、抱いていい?」


そういって私を抱き上げ
ベッドに向かう。


さっき叩かれた頬が痛い。


それでも秀の笑顔が見たいから私は笑うんだ。


昔の秀は、私に乱暴なんて絶対しなかった。


優しくて、喧嘩なんてしたこともない。


けれど、あることがきっかけで秀は変わった。


時に、機嫌が悪くて、
乱暴に抱かれることもある。


たまにね、泣きたくて
どうしょうもない時もある。


けれど泣かないんだ。



大丈夫だよ雫。
笑うんだ雫。


愛されてる証拠だよ。


そう自分に言い聞かせて。



いつしか、本当に笑うこともできず、涙も流さなくなっていた。



< 30 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop