涙雨[ナミダアメ]
メイカのバイクで
秀の会社にやって来た。



3階建てのビルの3階が
秀の会社のオヒィス。


中に入ると、いつものデスクに秀は居なかった。


「あれ、雫ちゃんと不良娘!」


「何でアタシだけ名前じゃねーんだよ。モリリン~」

森陸斗が、部屋に入ってきた。


『陸斗とは仲良くするな。』


秀にそう言われたのを
思い出す。
雫は、黙って秀のデスクに座った。


「卒業式終わったんだ?」

「そ。
モリリンじゃなくて、秀さんに卒業証書見せに来たの~」


「残念だな~
秀さん今、取り引き先に行っていて居ないんだ。
2時間後くらいに帰って来るけど。」


「なんだ~。
つまんねーの。」


「代わりに俺がお祝いしたげるって!」


「いい~。
秀さん居ないならアタシ帰ろ~。雫は?」


帰っても、家に祝ってくれる人なんていない。


雫の両親は、仕事中心で生きている人間だから家にはいない。


兄弟も居ないから、
さすがに誰もいない家に帰るのも気が引ける。


今日は卒業っていう
一応めでたい日なんだし。


「私は待ってようかな。」

「そっか。
じゃあアタシは行くよ。



「不良娘、おめでとうな。」


メイカは、
『卒業暴走じゃー!』
なんて言って帰って行った。



この部屋は、社長室だから他の従業員たちはいない。


部屋にいるのは、
森陸斗と雫だけになった。


< 57 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop