涙雨[ナミダアメ]
雫を見つめる瞳は、
どこか切なげで…
悲しくも見えた。


「雫ちゃんが好きだよ。」

雫は、驚きを隠せなかった。


雫にとっては、兄のような存在で、勿論秀しか頭にないわけで…


好きなんて言われるとは
思ってもいなかったから。


「モリリン…あのね!」


「わかってるよ。
雫ちゃん、秀さんにベタ惚れだもんね。
けどさ、好きってわかっちゃったからもう引き返せないんだ。」



一瞬だった。


森陸斗が私にキスをした。


拒むことができたのに…



雫は拒まなかったのだ。



その理由は、
彼がキスをしながら涙を流していたから。


切なくて苦しくて…


そんな感情が伝わって、
雫は突き放すことができなかった。



秀のじゃない熱が口に広がる。



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