涙雨[ナミダアメ]
真っ暗なリビングに
私の左手に光る指輪…


メイカと別れ、
家に帰って来た。


「秀…これ貰えないよ。」

「何で?」


低くなった声。


「だってこれって婚約指輪だよね…」


こんな大切なもの
私なんかがつけていいの?

だって私…迷ってる。


頭の中に麗夜くんの顔が浮かんでる。


麗夜くんといたら
もっと楽しいんじゃないかって思ってしまうの…



そんな気持ちで…つけたら…


「アイツだろ…」


「え?」


「お前は…今アイツのこと考えてんだろ!」


ガシッと大きな手が
首を掴む。


「…ぐッッ…」


苦しいよ。
痛いよ。


秀…。


「丘城高校3年
霧島麗夜。
お前はそいつと随分親しいな…
そいつに何たぶらかされた!?」


「ッッ…秀ッッ…なしてッッ」


酸素が足りなくてくらくらしてくる。


「アイツなんかに渡してたまるか…
雫、アイツのこと好きなのか!?あ?」


バシ…


今度は頬に痛みが走る。


違う。


違うよ。


秀…


必死で首を降る。


目の前が歪んで見える。



秀…


私はあなたから離れられないんだね。



あなたを愛してしまったから。



体も痛いけど、
心も痛い。


麗夜くん…


私はあなたを愛せない。



愛してはいけないの。
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