涙雨[ナミダアメ]
まあ…でも
ひなこになら話してもいっか。


一応、雫ちゃんのこと
知っているわけだし。


「絶対、他に言うんじゃねえぞ。」


「大丈夫!
ひなこ口固いし~」


「雫ちゃんさ、やっぱり
DVされてた…
それも、結構前から。」


「やっぱり!!
それで?麗夜はあの女をどうしようっていうの?」


「あの男から奪う!」


「…へえ。
本気で好きなんだ。」


「当たり前だろうが。
でもさ~肝心なこと言ってないし。
結局、まだ何も変わってないんだよ。」


「コクったんじゃないの!?」


「いや、好きとは言ってない。ただ、男としてそばにいるって言ったんだ。」


「ダメじゃん!!
そばにいるだけじゃ、意味ないじゃん。奪うんでしょ?あの女を…」


「まあ。
けどさ、奪うってどうしたらいいんだろ。
今まで、本当体しか使って来なかったから、
体使って奪っても意味ないんだよな~。」


体使って、雫ちゃんを抱いたらそれはそれでアイツから奪うことになるのかもしれない。


けどそれじゃダメで…


好きだから、好きだからこそ雫ちゃんには手を出せない。


「麗夜がキスさえしてないなんてね~。
ふたりきりなんでしょ?
勉強してるとき。」


「大体はな。
そりゃあさ、理性を保つのに必死だよ。
必死だけど、泣きそうな顔してんのに抱けねえよ。」


「変わったね。麗夜~」


ひなこが俺の頭を
くしゃっとした。


「やめろ~髪型乱れる!」


「惚れ直した!」


「へ?」


「ひなこは諦めないよ。
たとえ叶わなくても。」


そう言って、ふっと笑った。


ひなこもきっと苦しいんだろうな。



好きな女がいる男を
本気で好きなんだから。



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