涙雨[ナミダアメ]
家に帰ると、ババアが
俺の知らない男といた。


「よおッッ!麗夜!」


今麗夜ってサラッと
呼び捨てで呼んだけど…


「コイツ誰?」


「コイツじゃないわよ。
沼田 陽平ヌマタヨウヘイ。
陽平さんと呼びなさい!」

バコ…


「いてえな…
頭は大事なんだぞ!
絶対今ので頭カスカスになったわ~」


ババアのやつに頭を叩かれた。


「ヨロシクな!陽平。」


「おう!」



黒髪で短パツ。
顔は…いかつい感じ。


「陽平ってババアと付き合ってんの?」


「あぁ。
結婚を前提にな。」


「ふーん。」



「ちょっと麗夜!
ふーんってそれだけ!?
もっとないわけ!!
驚きとかさ、俺は認めねーとか。」


「別に。
ただ…ババアを泣かしたらただじゃおかないかもね~。」


「母親思いなんだな。お前も…」


「うるせえ!バカマモ!
泣いたらこの人面倒なんだよ。」


泣いたら泣き止まないから面倒なんだ。


てゆうのが半分で、
もう半分は…


親父が出ていった時、
滅多に泣かないババアが初めて泣いた。


俺が初めて見る泣きがおで…


どうしたらいいかわかんなくて、俺も泣いた。



ババアの泣きがおは
人生で一番悲しく見えた。


だからババアを泣かしたら今度こそは殴るかもな。


出ていった親父のぶんも含めて。



「陽平は何やってんだ?」

「トラックの運転手。」


「すげえな。
ババアとお似合いじゃん!」



仲良くな~なんて言って
部屋に向かった。



もうすぐ雫ちゃんがくるんだ。



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