ヴァニタス
戸惑っている私に、武藤さんはりんごを手の中に押しつけた。

それから笑うと、
「警察へ行ったご褒美」
と、言った。

「えっ、ご褒美ですか?」

私は聞き返した。

と言うか、警察へ行ったことは行ったけど、それのご褒美にりんごを私に押しつけた意味がわからなかった。

「俺からのプレゼント」

武藤さんは続けて言った後、またりんごの山からりんごを1個手にとった。

「それは?」

武藤さんの手の中にあるりんごを指差して聞いた私に、
「俺が食べたいだけ」

武藤さんが笑いながら言った。
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