ヴァニタス
規則正しい波の音が聞こえる中を、私と武藤さんは歩いた。

波の音よりも、私の心臓の音が武藤さんに聞こえているんじゃないかと不安になる。

私の手から、武藤さんの手に心臓のドキドキと鳴っている音が伝わっているんじゃないかと不安になる。

何より、私の気持ちが武藤さんへ伝わっているんじゃないかと不安になる。

私が武藤さんを好きと言うこの気持ち。

彼に伝わって欲しいと思っている反面、伝わったら怖いと思っている私がいる。

「――あそこで少し休もうか?」

そう言った武藤さんが指を差した先には、どこからか流れてきた大きな流木があった。

「そうですね」

私が返事をしたことを確認すると、一緒に流木の方へ向かった。
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