ヴァニタス
おまわりさんが私たちに何の用事なんだろう?

そう思っていたら、
「先ほど…と言うよりも、15時くらいですかね。

この周辺をウロウロしていた怪しい男を捕まえまして」

おまわりさんが話を始めた。

「えっ…」

男と聞いたとたん、私の頭の中に浮かんだのは悪魔だった。

「果南ちゃん」

私の様子に気づいた武藤さんが名前を呼んだ。

「あっ…大丈夫です…」

口ではそう言ってみたけど、本当は大丈夫なんかじゃなかった。

心がザワザワと、悲鳴をあげている。

「あの、大丈夫でしょうか?」

心配そうに聞いてきたおまわりさんに、
「すみません、数日前から妻は体調を崩しておりまして」

武藤さんは説明をした。
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