ヴァニタス
妻――ああ、そうだ。

警察の前では、私と武藤さんは夫婦と言うことになっているんだ。

武藤さんが私のことを妻と呼んでも、夫婦だからおかしなところはない。

「果南ちゃん、代わりに俺が事情を聞くから中に入って…」

そう言った武藤さんを、
「大丈夫です…。

ご心配をおかけして、すみませんでした」

さえぎるように言った後、私はおまわりさんに謝った。

「そうですか…」

おまわりさんは言いにくそうに返事をした後、
「その男なんですけど、何でもこの家に住んでいる女性と知り合いだったと言うことで」

話を再開させた。

やっぱり、悪魔だ…。

悪魔が私の住んでいるところへきたんだ…。

震え出した私の躰を、
「果南ちゃん」

武藤さんが私の名前を呼んで、私を抱きしめた。
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