ヴァニタス
「これは本当に、失礼いたしました!

まさか、捕まえた男が奥様のストーカーだったなんて…!」

おまわりさんは慌てたように私たちに頭を下げた。

「話が伝わっていなかったのは、仕方ないことです。

頭をあげてください」

そう言った武藤さんにおまわりさんは頭を下げた。

「ご報告をありがとうございました」

武藤さんがおまわりさんに言った。

「いえ、とんでもないです。

また何かありましたら110番に」

おまわりさんはペコリと頭を下げると、私たちの前から立ち去った。

おまわりさんの後ろ姿が見えなくなったことを確認すると、
「中、入ろうか?」

そう言った武藤さんに、私は首を縦に振ってうなずいた。
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