ヴァニタス
ソファーに座った私に、
「はい、コーヒーでよかったかな?」

武藤さんがマグカップに入ったコーヒーを差し出した。

「ありがとうございます」

私がそれを受け取ったことを確認すると、武藤さんは床のうえに腰を下ろした。

「あの…」

「んっ?」

「ソファーに、座らないんですか?」

自分の隣を指差して言った私に、
「俺はここでいい」

武藤さんはそう言って首を横に振った。

「すぐに捕まってよかったね」

武藤さんが言った。

「はい、よかったです」

私は首を縦に振ってうなずいた後、コーヒーを口に含んだ。
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