ヴァニタス
私が死ぬことを止めてくれた人。

私のために泣いてくれた人。

私に生きることを切望してくれた人。

私の好きな人。

そんな人のそばを、私は離れたくないよ…。

「桜」

「えっ?」

武藤さんが指差した方向に視線を向けると、テラスにある桜の大木だった。

「来年、一緒に桜を見る約束していたでしょ?」

「あっ…」

――果南ちゃんがまだ生きていたら、一緒にお花見をしようか?

最初に武藤さんと出会った時に交わした約束を思い出した。

そうだ…。

私には、武藤さんとお花見をするって言う約束があったんだ…。

彼との繋がりがまだ消えていなかったことに、私は嬉しくて泣きそうになった。
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