ヴァニタス
あっ、気づかれた。

どうしよう…私、英語がしゃべれないのに…。

英語で話しかけられたら、私何て答えればいいの?

戸惑っている私に、彼女は気づいていない。

彼女は私に歩み寄ると、
「すみません」
と、声をかけた。

えっ…?

「日本語?」

私は耳を疑った。

彼女、今流暢な日本語で言わなかった?

私は彼女の顔を見つめた。

やっぱり、外国人だった。

淡褐色の瞳に、高い鼻――どこからどう見ても、彼女は外国人だった。

外国人の彼女の唇から流暢な日本語が出てきたとは思えない。
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